福井のスローフード「へしこ」を12種類食べ比べてみた。暑い夏を超えて美味しくなる

記事内のアフィリエイトリンクから収入を得る場合があります

珍味大好き、東京散歩ぽです!

2018年8月6日に福井県のアンテナショップ「ふくい南青山291」にて開催されたメディア限定のイベント「究極のへしこ講座」に参加してきました。福井県で江戸時代中期には作り方が確立していたという伝統の保存食「へしこ」12種類を食べ比べしてきましたよ!

書籍「東京の懐かしくて新しい暮らし365日」試し読みページ

福井県の伝統保存食「へしこ」とは?

まずは今回の主人公「へしこ」について。

「へしこ」とは福井県に伝わる伝統の保存食のことを言います。福井県の若狭地方には「なれずし」と呼ばれる発酵食品などいろんな発酵食品がありますが、「へしこ」はその中のひとつにあたります。

サバ、イワシ、ニシン、フグなどを塩水に浸けた後、塩抜きして、糠漬けにすることで腐敗を防ぎ、長期保存できる独特の味わいが特徴的な福井のスローフードです。

この日は、へしこ博士の小坂康之さんによる「究極のへしこ講座」と郷土料理研究家でフードプロデューサーの佐々木京美さんによる解説付きのへしこ12種類の食べ比べイベントでした。

へしこ博士・小坂康之さんの究極のへしこ講座

福井県立若狭高校教諭・小坂康之さん

福井県立若狭高校教諭・小坂康之さん

まずは福井県立若狭高等高校・海洋科学科の教諭で福井大学大学院博士課程で「サバへしこ」の製造技術と品質形成について科学的に研究し博士号を取得した小坂康之さんが登壇しました。小坂先生は各地でへしこについての講座を開くなど「へしこ博士」として活躍されています。

日本各地で最高気温を更新するなど、記録的な猛暑となった今年の夏は小坂先生曰く「究極のへしこの夏」なんだそうです。その理由はへしこ作りには温度がとても関係しているからなんですって。

SPONSORED LINK

まずは「へしこ」の旨味を科学的にお勉強。

魚肉の主成分は「たんぱく質」ですが、「へしこ」にすることでサバの中にある消化酵素の働きで分解され、旨味成分の「ペプチド」と「アミノ酸」が豊富に含まれる成分に変わるそうです。

「へしこ」にすることで、生サバの旨味とは全く違った成分になり、旨味が濃くなるんですね。

マサバへしこの製造工程

マサバへしこの製造工程はこちら。

  • 背開き→ 塩漬け(7日間)→ 糠漬け(7ヶ月間)→「へしこ」

さらに小坂先生は「へしこ」の定義と作り方のコツについて、以下の4点をポイントとして上げました。

  1. 加塩量20%以上
  2. 30℃以上の熟成
  3. 塩水をはる
  4. 6ヶ月以上の糠漬け期間

30℃以上の暑い夏を越すことで、美味しい「へしこ」ができるんだそうです。

でも、30℃以上って食べ物が腐ってしまいそうな気温ですよね。大丈夫なんでしょうか?

小坂先生の研究結果によると、糠漬けをして7ヶ月経過すると、お腹を壊すような菌はほとんど検出されなくなるんですって。カビも7ヶ月経過すると「酵母」となり、お酒を作るときと同じような香りがするそうです。さらに乳酸菌も増えて酸味が増して、悪い菌が生えにくくなるそうです。

ではなぜ、腐敗せずに熟成できるのかというと、それは糠漬けをする際、塩漬けにした際に出る塩水(すえ)をまぶしながらからなんだそうです。

樽に仕込んだ「へしこ」の上に重石を乗せ、そこに張る「すえ(塩水)」が真空パックのようにサバを覆い、空気に触れないことで、暑いところに置けば置くほど、旨味が増えるんですね。

暑い夏が美味しい「へしこ」を作る

またアミノ酸やペプチドといった旨味成分は、10℃よりも30℃の方が旨味成分が出るとの研究結果もあり、暑い夏であればあるほど美味しい「へしこ」が出来るんですって。

つまり酷暑の今年は、

「究極のへしこ」が出来る夏!

ということなんですね!昔の人の知恵は本当にすごい!

さらに、ペプチドを多く含む「へしこ」のエキスをラットに与えると、血圧が上昇を抑えるという研究結果も披露されました。「へしこ」はとても塩辛い食品なのですが、血圧を下げたり、抗酸化性があったりと適度に食べれば、健康にも寄与しそうな研究結果が出ている発酵食品なんですね。

福井の「へしこ」12種類を食べ比べ!

郷土料理研究家・フードプロデューサーの佐々木京美さん

郷土料理研究家・フードプロデューサーの佐々木京美さん

小坂先生の「究極のへしこ講座」のあとは、郷土料理研究家・フードプロデューサーの佐々木京美さんの解説付きで「へしこ」12種類の食べくらべとなりました。

佐々木さんは「へしこは昔の人が今日明日生きるために生まれた保存食。お店によって香りも違ってくるので、日本酒の酒蔵のような芳醇な香りがするところもある。へしこは鯖だけでなく、様々な種類が福井で残っているので違いを楽しんでもらえれば」と話しました。

鯖(国産)日向へしこ工房勘兵衛 (生・焼き)

まずは「日向へしこ工房勘兵衛」さんは国産の鯖を使用した「へしこ」。

原材料に鯖、糠、みりん、焼酎、醤油、砂糖、酒粕、唐辛子を使用して、かなり塩気と香りが強い味わいでした。

鯖(国産)民宿 かどの(生・焼)

民宿かどの」さんは小坂先生が指導して作成したという「へしこ」が登場。

原材料は千葉県産の鯖、糠、塩のみですが、糠は無農薬の厳選したものにこだわっていて、1年4ヶ月漬けたというへしこは、日本酒のような芳醇な香り。特に焼いた鯖のへしこはとても香ばしく、奥深い味わいで今回の食べくらべの中でも個人的にとても好みでした。

鯖(国外)海の宿さへい(生・焼)

海の宿さへい」さんからはノルウェー産の鯖、糠、塩、米麹(200本の樽に一升五合)、唐辛子を原材料に使用したへしこ。ノルウェー産の鯖は脂の乗りもよく、米麹の風味もとても感じました。

国外イワシ(田村長・焼)ふぐ(若狭海遊バザール千鳥園・生)

田村長」さんはイワシの焼へしこ(写真左)は糠と塩、唐辛子だけで漬けてますが味噌漬けのような味わい。

若狭海遊バザール千鳥園」さんのふぐのへしこ(写真右)は少々淡白な味わいでした。

国産シイラ・国産イカ(越廼漁業協同組合 ぬかちゃんグループ)

地元の女性グループ「越廼漁業協同組合 ぬかちゃんグループ」さんが作るのは国産シイラ(写真左)と国産イカ(写真右)の「へしこ」。酒粕に1週間ほど漬けて塩分を抜くのが特徴のシイラのへしこはかなり珍しいそうです。

イカのへしこは塩加減が難しい高度な技術が必要なへしこ。とてもしっとりした食感でした。1年目より2年目のほうが旨味が変わってくるそうです。

国産 鯖(佐助・生)・国産 鯖(越廼漁業協同組合 ぬかちゃんグループ・生)

「佐助」さんはへしこ(写真左)は塩と米飯で乳酸発酵させた「なれずし」にしたもの。これまでのへしこよりも塩気がだいぶ抑えられ、酸味もありました。

最後は「越廼漁業協同組合 ぬかちゃんグループ」さんのイカ(写真右)はオリーブオイルとトマトを使ったアレンジ版で、イタリアンにも合いそうなへしこでしたよ!

この日は創業文化元年(1804)の老舗「天たつ」の11代目、天野準一さんが登場。

代々伝わる製法で作る「汐うに」はバフンウニという小さいウニ1個につき1gしか作れないという貴重で濃厚なウニ。8月は新モノに時期らしく、採れたてのウニは潮の香りが鮮烈でこちらもお酒と一緒に食べたい福井の珍味でした。

民宿 かどのさんの焼へしこでお茶漬け!

民宿 かどのさんの焼へしこでお茶漬け!

最後は、へしこを福井の新しいお米「いちほまれ」の上に載せてほうじ茶をかけた「お茶漬け」。お茶で塩加減も自分好みにできるので、これはいいですね!

今回12種類のへしこを食べ比べをしたんですが、ひとくちに「へしこ」と言っても、使う魚や材料によってかなり味わいも変化してくるんですね。試食用に福井のお酒も少しいただいたんですが、酒の肴としても最高でした!

福井県のアンテナショップ「ふくい南青山291」では、ご紹介した一部のへしこが販売されてましたよ!

福井の日本酒も多く取り扱ってるのでお酒好きな方もぜひ、チェックしてみてくださいね!

あわせて読みたい