展覧会「高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの」を見た感想

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ジブリっ子です、東京散歩ぽです。
千代田区北の丸公園にある東京国立近代美術館にて、2019年7月2日から10月6日まで「高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの」が開催中。先日見に行ってきたので、感想などをお伝えします。

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高畑監督の生涯仕事ぶりが分かる展覧会

『アルプスの少女ハイジ』を再現したミニチュア

『アルプスの少女ハイジ』を再現したミニチュア

この展覧会は宮崎駿監督と並んで、スタジオジブリの二大巨頭として活躍され、昨年亡くなられた高畑勲監督が、その生涯で携わったアニメーションや作品の企画書、原画、絵コンテ、セル画など、様々な資料が展示されています。

会場内はもちろん撮影禁止でしたが、「アルプスの少女 ハイジ」の精巧なミニチュアと、入口付近には山小屋のセットの展示のみ撮影OKでした。

このエントリーでは、その写真を掲載しつつ、展示会の感想を綴ってみたいと思います。

ハイジとおんじとヨーゼフ

ハイジとおんじとヨーゼフ

高畑勲監督と聞くと『火垂るの墓』や『平成狸合戦ぽんぽこ』『おもいでぽろぽろ』、そして遺作となった『かぐや姫の物語』など、スタジオジブリ制作のアニメーションを思い浮かべる方がほとんどですよね。

僕も劇場ではじめて観た高畑作品は『おもいでぽろぽろ』だったかな。プレスコ形式(事前に声をとってからアニメーションをつくる手法)で作られた今井美樹さんと柳葉敏郎さんにそっくりのキャラクターと、朝焼けの中、紅花を摘むシーンがとても印象的で、アニメーションでこんな綺麗なシーンが作れるんだと子どもながらに感心したのを覚えています。

でも、ほんとはもっとそれ以前に高畑作品は観てたんですよね。『アルプスの少女ハイジ』は高畑勲さんが監督で、宮崎駿さんが画面構成で作品に携わってます。その後の世界名作劇場枠では、『母をたずねて三千里』、『赤毛のアン』も高畑監督が携わった作品。

こうしてみると、僕ら世代以降の日本の子どもたちは必ずどこかで高畑監督のアニメーションに触れていたんですね。

アニメ「ドラえもん」を作ったのは高畑監督!?

丘を駆け上がるペーターとヤギ

丘を駆け上がるペーターとヤギ

正確に言うと、僕は『アルプスの少女ハイジ』と『母をたずねて三千里』は、再放送でよく見ていました。アルプスの壮大な景色をもとに、日常の生活がしっかりと描かれていて子どもながらに見飽きる事はありませんでした。

高畑監督は、長編初演出となった1968年制作の『太陽の王子 ホルスの大冒険』から遺作となった『かぐや姫の物語』まで、その時代時代で新たな技術を用いてアニメーション制作に打ち込んでいました。

展覧会では各作品の詳細な制作過程や資料が分かりやすく展示されていて、その作成意図などを記した企画書がとても印象的でした。(高畑監督の字がとても綺麗でかわいらしい!)

特に印象的だったんのは『ドラえもん』の企画書。国民的アニメ『ドラえもん』は、今でこそテレビ朝日で放映されてますが、それより前に日本テレビでアニメ化されてますが、最初のアニメ化の時は様々な問題があり、わずか半年で終わってしまったんですね。

そして、高畑監督が書いた企画書は2度目のアニメ化となる1979年から放映を開始したテレビ朝日版。

今のスタイル(15分x2話)を作ったのも高畑監督だったというのは知りませんでした。まさか高畑監督が藤子アニメの礎を作った人だったとは…!

おんじの山小屋の再現セット

おんじの山小屋の再現セット

アニメーション監督でありながら、高畑監督ご自身は、一切画を描かない監督として有名でした。1981年制作の 『じゃりン子チエ』以降は日本の風土や所作などのディテールに興味をもち、作品を作っていきます。

高畑監督はかなりの博識で、様々なジャンルについての知識量はものすごかったそうです。遺作となった『かぐや姫の物語』の脚本を高畑監督と共同で書いた坂口理子さんは、のちのインタビューでものすごく楽しい時間だったと語っていました。

その反面、納期や制作費は事前の予算とは全く違ったものになっていたそうで、制作陣(プロデュースチーム)の苦労は想像するだけでも大変そう。

「かぐや姫〜」は、普通のアニメーションとは違い、原画だけでも普通の3倍もの枚数が必要だったため、ものすごい労力と時間がかかった作品となりました。(この展示だけでもかなりのボリュームなので必見!)

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まったりするヨーゼフ

まったりするヨーゼフ

展覧会のそこかしこで印象的だったのは、高畑監督が制作するアニメは「原作に忠実にしている」ということ。

そのため人物設定や事実背景、バックグラウンドなど物語の表面上には見えてこない緻密な部分まで、徹底的に原作に忠実にしているからこそ、物語に深みが増して、アニメーションながらまるでドキュメンタリーを見ているかのようなリアリティを感じたんだなと感じました。

「高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの」は、ファンタジーを作り出してきた宮崎監督とはまさに対極でものづくりをしていた高畑監督の生き様そのものが垣間見れる展覧会でした。

※場所を間違えて、六本木の国立新美術館へ行ってしまったのは内緒です。

高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの

会期:2019年7月2日(火)~10月6日(日)
会場:東京国立近代美術館1階企画展ギャラリー(東京都千代田区北の丸公園3-1)
休館日:月曜日(ただし 7 月 15 日、8 月 12 日、9 月 16 日、9 月 23 日は開館)、7 月 16 日(火)、
8月13日(火)、9 月 17 日(火)、9 月 24 日(火)
開館時間:10:00-17:00(金、土曜日は 21:00 まで) ※入館は閉館 30 分前まで
主 催 東京国立近代美術館、NHK、NHKプロモーション
企画協力 スタジオジブリ
協 力 (公財)徳間記念アニメーション文化財団
協 賛 凸版印刷
観覧料 一般 1,500円、大学生1,100円、高校生600円
公式サイト:https://takahata-ten.jp

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