河瀨直美監督の映画『光』感想「前に進むことが明日の自分を創り出す光となる」

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河瀨直美監督作品『光』5/27(土)公開
映画好きの東京散歩ぽです!
2017年5月27日(土)から全国公開する河瀬直美監督の最新作『光』を先行試写会で観てきました。第70回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品が決まった同作品は切なくも美しいラブストーリーです。

【ストーリー】
単調な日々を送っていた美佐子(水崎綾女)は、とある仕事をきっかけに、弱視の天才カメラマン・雅哉(永瀬正敏)と出逢う。美佐子は雅哉の無愛想な態度に苛立ちながらも、彼が過去に撮影した夕日の写真に心を突き動かされ、いつかこの場所に連れて行って欲しいと願うようになる。命よりも大事なカメラを前にしながら、次第に視力を奪われてゆく雅哉。彼の葛藤を見つめるうちに、美佐子の中の何かが変わりはじめるー。

視力を失いゆくカメラマンを永瀬正敏さんが熱演

物語は目が不自由な方に向けて、シーンの具体的な情景や動作を文章に起こし、音声で知らせるという視覚障碍者向けの映画の音声ガイドを作る仕事をしている美佐子(水崎綾女さん)と弱視の天才カメラマン・雅哉(永瀬正敏さん)を中心に進んでいきます。

少しでも分かりやすく、映画の内容を具体的に伝えたいという気持ちとは裏腹にあくまでも映画の補助としての役割の音声ガイドの製作はある意味、正解の無い世界です。認知症の母を親戚に預け、音声ガイドの製作に苦悩する美佐子(水崎綾女さん)はこの映画の中でも最も共感できるキャラクターでした。

永瀬正敏さんは河瀬監督の前作『あん』に続くタッグ。前作は影のある主人公・千太郎を好演した永瀬さんですが、本作でも自分を信じ、写真の世界で生きてきたものの視力を次第に失っていくというしのび寄る恐怖を見事に演じています。最初は衝突しながらも次第に心惹かれていく美佐子への想い。さらに雅哉が撮った1枚の写真が二人の運命を大きく動かします。

希望の光

以前「TAMA映画賞」の取材時に永瀬さんも言ってましたが、芝居を始める合図「よーいスタート」という掛け声は全く行われないのが河瀬組の大きな特徴。俳優陣は現場に入る前から役として生きていないといけないそうです。本作では視覚障碍者の方も多く出演していますが、掛け声はかけず、ずっとフィルムを回すことでドキュメンタリーのような自然な演技を引き出すところは、さすがリアリティを追求する河瀬監督の真骨頂と言えます。

作品を通して部屋に差し込む光、山頂からの夕日の光、失いゆく光など様々な形の光が映し出されます。どんな状況に置かれても、今の自分を信じて一歩でも前に進むということが、明日の自分を創りだす「希望の光」になるのではないか。この作品にはそんなメッセージが込められています。

ちなみに前作『あん』で永瀬さんと共演した樹木希林さんが思わぬ形で出演していますが、これは観てのお楽しみ。

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